再エネ100宣言 RE Action

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「再エネ100宣言 RE Action シンポジウム2022 ―再エネが照らす脱炭素社会」 開催報告

2022年12月2日、東京・日比谷のBASE Qホールにて、「再エネ100宣言 RE Action シンポジウム2022―再エネが照らす脱炭素社会」が開催され、約140名が参加しました。

再エネ100宣言 RE Action(以下、RE Action)は、 2022年10月に設立3周年を迎えました。参加団体は12月2日時点で291となり、着実に広がりを見せています。一方で、エネルギー価格の高騰などにより、自前の発電設備を持たない電力需要家にとっては再エネ電力の調達が難しくなるという課題も浮かび上がっています。

そのような中で開催されたシンポジウムは、脱炭素社会の実現において重要な鍵を握る再エネの調達について、多彩な実践事例を通じて、それぞれの知見や課題を共有する場となりました。

◆開会挨拶と応援メッセージ

講演に先立ち、再エネ100宣言RE Action 協議会委員を務める梅田 靖氏(グリーン購入ネットワーク 会長)より、開会の挨拶がありました。また、西村明宏環境大臣、ならびにRE100を主催するThe Climate Groupエグゼクティブ・ディレクターのマイク・ピアス氏から寄せられた応援メッセージが披露されました。

 
左:梅田 靖氏、右:司会の秋元 智子氏(一般社団法人 地球温暖化防止全国ネット 専務理事)

◆講演1「需要家によるイニシアティブの意義」

三宅 香氏(日本気候リーダーズ・パートナーシップ(JCLP) 共同代表/三井住友信託銀行株式会社 ESGソリューション企画推進部 主管)

2009年に設立された日本気候リーダーズ・パートナーシップ(JCLP)は、1.5℃目標達成へのリーダーシップを発揮することを目指して活動する企業集団です。11月にエジプトのシャルム・エル・シェイクで開催された国連気候変動枠組条約第27回締約国会議(COP27)には、三宅氏を含むJCLPのメンバーが視察に訪れ、脱炭素の分野における世界のトップ企業や、市民団体、科学者たちの話を聞き、対話を重ねました。

三宅氏は、その中でも特に印象的だった出会いをいくつか紹介しました。例えば、世界的医学誌に執筆する医学博士たちが声を揃えて「気候変動は明らかに医療にとって21世紀最大の脅威である」と訴えていたことを挙げ、気候変動が人間の健康にもたらす直接的な被害は、災害による被害とは別次元のものであるという警鐘を鳴らしていることに言及しました。

また、グリーンスーパーメジャーと呼ばれる世界的大手電力企業が、電源を化石燃料から再エネに転換する際に、どのように変えたのか、そのことによって企業価値がどう変わったかという話を聞き、ヒントを得たと話しました。これらの企業は、国全体の問題に対し、「企業だけが変わればよいわけではなく、国と一緒に解決策を考えることが大切だ」と主張していたそうです。

三宅氏自身も、前職やJCLPで脱炭素を目指す中で、同じことを感じてきたと言います。当初は再エネを増やそうとしても、国の目標値の低さや、法整備の不備によりさまざまな課題が噴出していましたが、その状況を変えたのは、志を同じくする企業の共働による政府や関係省庁への粘り強いアプローチでした。

三宅氏は最後に、JCLPやRE Actionのようなイニシアティブについて、「企業が集まって行動する力を、どのように使っていくかがますます大切になっている。いまは大変なことがたくさんあって、めげそうになることもあると思うが、俯瞰したときに、皆の力で乗り越えられる、乗り越えなくてはいけないものだと感じている」と述べ、その意義を強調しました。


三宅 香氏

◆講演2「年次報告書2022速報 ~需要家の声・取り組み~」

土肥 良一(再エネ100宣言RE Action 協議会委員/芙蓉総合リース株式会社 経営企画部(CSV推進担当) 本社上席審議役)

土肥氏からは、シンポジウムの開催に合わせて公表された『再エネ100宣言 RE Action年次報告書2022』のポイントと、過去3年間の活動の総括の発表がありました。

RE Actionの参加団体数は、3年前の発足時に比べ、28団体から286団体(年次報告書発行時)へと10倍に増加しました。また、アンバサダーとして中央省庁や自治体がバックアップを行い、地域を挙げて脱炭素を実現する展開が生まれています。参加団体の実績報告によると、消費電力を100%再エネにする目標年の平均は2035年です。また、2025年までに再エネ100%達成を目指す団体は全体の3分の1に及んでいます。再エネ100%達成状況を見ると、45団体がすでに達成し、22団体が2022年度中の達成を目指しています。再エネ導入の取り組みに対する内外の反響としては、企業価値の向上や、他社との差別化につながったことなどが挙げられ、先行して脱炭素に取り組むことで、ビジネス面でもメリットが生じているようです

再エネ導入の課題として最も多かったのが、「費用対効果の見極めが難しい」というものでした。環境負荷を低減する効果があるはずの再エネ電力ですが、日本では通常の電力料金よりも高くなっているという状況が課題の背景にあります。土肥氏は、気候危機をもたらす側が社会損失やダメージのコスト負担を担うのが本来の姿であるにもかかわらず、実際は、気候危機を回避するための再エネを調達している側が環境価値分を「費用」として負担している現状を指摘し、脱炭素社会推進のためにカーボンプライシングの議論を進める必要について言及しました。また、再エネ調達は海外ではすでにリーズナブルになりつつあり、日本でも再エネが経済的メリットのある選択肢になるように、RE Actionとしても対外的にも働きかけていきたいと語りました。さらに、「太陽光発電設備の屋根置きでは100%には足りない」「テナントの場合は証書以外の調達方法がない」といった課題はRE100参加企業にも共通しており、需要家側の声を集め政策的なアプローチを強化する必要性を改めて感じていると述べました。

土肥氏はこの3年間を総括し、日本でも大企業や地域を取り巻く環境が大きく変化したことに触れ、世界共通の課題である気候変動に向き合う際、RE Actionのように国際基準に合致したイニシアティブがますます評価される潮流があると締めくくりました。


土肥 良一氏

◆事例発表

事例発表では、RE Actionの参加団体4社がそれぞれの脱炭素の取り組みを紹介しました。

◇「行政と連携した地域の脱炭素化について」
山本 浩之氏(川崎信用金庫 総合企画部 副部長)

川崎市に拠点を置く川崎信用金庫は、RE Actionへの参加をきっかけに、脱炭素の取り組みを本格化させました。建て替えた店舗を省エネ型にする、一部の店舗に太陽光発電設備を設置する、また再エネ電力を購入するといった工夫により、再エネ比率を36%ほどに高めています。山本氏は、「環境に良い設備投資はコスト回収ができないのではないかと考えていたが、実際は10年もかからずに回収できることがわかり、コストメリットについて地域の事業者にも伝えている」と述べ、今後は、自前で電力をつくることにも注力し、2030年より早い段階で再エネ100%を達成したいと話しました。

川崎信用金庫は、単独で取り組むだけでなく、川崎市と共同で「川崎市SDGsプラットフォーム」を運営するなど、地域の事業者との連携を広めています。山本氏によると、川崎市のSDGs認証制度に登録する2,441団体がプラットフォームに参加し、年内には3,000団体を超えることが見込まれるため、今後はさらに参加団体を増やして、地域を挙げて脱炭素とSDGsの達成に向けて進めていきたいと考えているそうです。


山本 浩之氏

◇「メーカーが取り組む再エネ調達と課題」
中西 謙司氏(山中製菓株式会社 代表取締役) 

山中製菓は、手作りでお菓子を作っている飴のメーカーです。中西氏は、「当社のお客様は小さな子どもであり、子どもたちの未来にきちんとした貢献をしたい」との思いから、脱炭素経営に邁進してきました。

きっかけは、2007年にディズニー社に製品を納入するにあたり、製造工程をオール電化にしたことにあるそうです。それを機にCO2排出量を2割ほど減らしたものの、2011年の原発事故により削減効果がなくなってしまいました。それでも2019年に新電力の再エネ100%プランに変更し、2021年にはRE Actionに参加しました。ところが電力価格高騰などを受けて、2022年6月に新電力との電気契約が終了することになり、最終保証電力に切り替えたため、100%を達成していた再エネ割合が、再びゼロに戻ってしまいました。

中西氏はそこで挫けず、まずメインバンクを通じて専門事業者によるコンサルティングを受け、SBT認定基準の削減目標を設定しました。さらに11月からは別の新電力のRE100プランに変更し、再エネ100%に戻しました。このプランは「市場完全連動型なのでリスクは高いが、電力会社から電力という商品を買うのではなく、市場から電力を調達するパートナーとして契約した」ということです。中西氏の話では、新電力契約を外れていた4ヶ月分に関しては排出量オフセットを行い、さらに2023年3月には、太陽光による自家発電所が完成する予定だそうです。


中西 謙司氏

◇「トップリーダーを目指す脱炭素経営への道のり」
砂金 英輝氏(株式会社宮城衛生環境公社 代表取締役)

宮城衛生環境公社は、仙台で廃棄物収集運搬、清掃業を行う企業で、仙台市内の約半分の面積の一般家庭ゴミの収集を手掛けています。砂金氏は、会社の将来や産業としての社会的価値向上も検討し、2018年に脱炭素経営を掲げました

「当初は何もわからない状態だった」と言う砂金氏ですが、2019年に宮城県内初の再エネ100宣言企業となり、仙台市主催の脱炭素経営セミナーに参加したことで、その方向性に確信が持てるようになったそうです。

2020年には自家消費型の太陽光設備を導入し、さらに宮城県由来のJ-クレジットを活用して、再エネ100%を達成しました。また、2021年にはV2HとPHVを導入し、停電時の対策にもつなげています。こうした活動が評価され、宮城衛生環境公社は宮城県や環境省などから複数の賞を受賞しています。砂金氏は「社員が誇りに思えるように、業界全体の社会的価値向上のために、広くは地球が、日本が、地域が美しい姿であり続けるために、当社の理念である『明るい衛生環境づくり』に向けて取り組みを深めていきたい」と話しました。


砂金 英輝氏

◇「Action for carbon neutral―脱炭素社会実現のための新昭和グループの取組み―」
鈴木 達也氏(株式会社新昭和 取締役特建事業本部長) 

新昭和グループは、千葉県君津市に本社を置く総合建設事業者です。注文住宅のほか、公共施設などの大型建設工事や産業用太陽光発電の開発も手掛けています。太陽光発電事業として、住宅の屋根への設置、販売は以前から行なっていましたが、2012年に千葉県初となるメガソーラー発電所を設置して以降、各地に大規模に展開しています。再エネ導入については、2030年までに50%、2040年までに100%の達成を目指しています。

また、千葉県南部の小中学校に太陽光発電設備を寄贈しており、寄贈先は9市町村18校(2022年11月現在)で、併せて環境体験学習も実施しているということです。鈴木氏の話では、2019年の台風15号が千葉県に甚大な被害をもたらしたことをきっかけに、「避難所である学校施設では非常用電源を備える必要があり、子どもたちにも環境や再生可能エネルギーへの関心を持ってほしい」という思いが生じ、寄贈に至ったそうです。

鈴木氏は、今後の展開としてオフサイト型の太陽光発電である「コーポレートPPA」の促進を挙げました。コーポレートPPAで用いられる手法の一つである自己託送とは、遠隔地に太陽光発電設備を設置し、発電した電力を一般の送配電網を利用して、自社の建物や関係会社などに送電する仕組みで、今後さらに需要が高まりつつあるとの期待が示されました。


鈴木 達也氏

◆パネルディスカッション 

パネルディスカッションでは、三宅氏、山本氏、中西氏、砂金氏、鈴木氏がパネリストとして登壇し、RE Action事務局の金子貴代がファシリテーターを務めました。

はじめに、脱炭素経営を実践した結果や課題などについて、鈴木氏と中西氏が発言しました。

鈴木氏は、「太陽光発電事業において、従来はFIT制度による売電目的が多かったものの、2020年に菅前総理がカーボンニュートラル宣言をしてから流れが大きく変わり、企業や自治体からの問い合わせが急増した」ことに触れました。また、太陽電池については、「年々価格が下がり性能も向上してきたものの、昨年からは一気に値上がりし、また半導体の不足で納期に時間がかかるため、早めの決断が必要となってきている」ことを課題として挙げました。

中西氏は、「電気を再エネ100%に切り替えたことで、新入社員の応募理由に脱炭素への取り組みが挙げられたり、取引先の企業から評価されたりするなど、少しずつ成果が見え始めている」と紹介しました。課題については、「再エネ100%を達成できていたのがいきなり0%になり、どのようにして脱炭素を実現したらよいか途方に暮れた」ことを挙げました。新しい電力会社を探すという方法しか思いつかなかった中で、コンサルティングを受けて自家発電設備の設置を決め、現在は「電気を決まった価格で買える時代ではなくなったという認識のもと、腹を括って前に進んでいる」との力強い言葉がありました。

続いて、行政との連携のあり方や、社内外での反響について、山本氏と砂金氏が発言しました。

山本氏は、川崎市と共同運営するSDGsプラットフォームでの役割分担について、脱炭素のロードマップを作り支援メニューを用意する行政に対し、川崎信用金庫は中小事業者の普及啓発を担っていると説明しました。山本氏は「約300人の外回りの職員が、毎日平均10社と話をしており、一日の合計は3,000千社、七日あれば20,000社を回ることができる」と述べ、実際、同プラットフォームに参加した企業の約9割が、川崎信用金庫の声がけがきっかけとなっていると紹介しました。さらに、「今後も地域を挙げてSDGs、脱炭素化に取り組むプラットフォームにしていきたい」と語りました。

砂金氏の場合は、宮城県が主催した脱炭素セミナーのアンケートに「何をどうしたらよいかわからない」と書いたところ、翌日、県職員から連絡があり、このことが活動の大きな転機となったそうです。社内での反響については、砂金氏が、「これからは環境にやさしい会社にしていく」と繰り返し説明しつつ、具体的な取り組みを行ったところ、しだいに社員の意識が高まり、脱炭素プロジェクトを自ら立ち上げたり、グリーン購入法適合品を積極的に購入するようになったりしたということです。

砂金氏は宮城環境衛生公社の最新の取り組みについても紹介し、建設中の使用済み太陽光パネルのリサイクルセンターが2023年4月から本格稼働する予定であることや、その設備自体も太陽光発電で動かし、足りない電力を再エネメニューで調達するため、サーキュラーエコノミーを実現する施設となることを説明しました。

三宅氏は、それぞれの発言を受け、脱炭素への意気込みについては、「大企業でも中小企業でもトップが腹を括って決断することの重要性は共通している」と語り、行政との連携については、「行政の担当者もアイデアがなくて困っているケースがたくさんあるので、まずは話してみて一緒に考えることも大事ではないか」と提案しました。そして、「脱炭素への取り組みの根底に、会社の社会的責任を果たすことや、社員の誇りにつながること、さらには子どもたちの未来のためになるといった話があったことは本当に素晴らしく、勇気づけられた」と述べました。

◆閉会の挨拶

JCLPの特別顧問を務める大島 理森氏(前衆議院議長)が、「現場の声こそ迫力があり、そこに真実があり、時代の流れを感じる」と述べ、事例発表をした4団体が哲学と方針を持ち、実践して努力していることに対する感動を伝えました。また、「企業が取り組む環境を大きな立場からバックアップする政治の流れをつくることが、これからの課題であるとの確信を持った」と述べ、シンポジウムを締め括りました。


大島 理森氏

登壇者全員で

●プログラムなど詳細は
https://saiene.jp/event2022

●講演資料は「脱炭素コンソーシアム」に公開しています。下記よりログインし、ご覧ください。
https://jclpmembers.force.com/consortiummembers/s/detail/a0w2r000000UMgoAAG

【参考:メディア掲載】
2022.12.20 ニュースイッチ 脱炭素に励む中小企業たち、語り始めたメリットと苦労
2022.12.12 新エネルギー新聞 レポート「再エネ100宣言 RE Actionシンポジウム2022」「地域の中小企業」の底力 脱炭素のテコに

【参考:参加団体によるレポート】
株式会社エコ・プラン RE Action(初!対面)シンポジウム!直接会えることの大切さ。
株式会社宮城衛生環境公社 「再エネ100宣言 RE Action シンポジウム2022―再エネが照らす脱炭素社会」出演(令和4年12月)