再エネ100宣言 RE Action

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株式会社イワタ直営店を訪問しました

再エネ化は、サステナブルなものづくりの一環
~株式会社イワタ直営店「寝具御誂専門店IWATA 東京」 訪問記

2024.4.26
再エネ100宣言 RE Action 事務局 金子 貴代

 「脱炭素チャレンジカップ2024 再エネ100宣言 RE Action賞」を受賞した株式会社イワタの取り組みについて同社代表取締役の岩田 有史(いわた ありちか)氏に詳しい話を伺うため、4月に、リビングデザインセンターOZONE(東京都新宿区)にある直営店を訪問した。


株式会社イワタ直営店「寝具御誂専門店IWATA 東京」

●サステナブルなものづくり

 創業190年以上になる京都市の寝具メーカー、株式会社イワタは、天然素材にこだわったサステナブルなものづくりに取り組んでいる。

 たとえば、掛け布団には羽毛、マットレスにはラクダやヤクの毛といった自然素材を使用しているほか、寝具に使用する全ての素材で、繊維製品に含まれる人体に有害な物質の使用について世界最高の安全基準を持つOEKO-TEX®(エコテックス)認証を受けている。また、製品タグには、製品を長く快適に使用するためのメンテナンス方法についてQRコードを表示し、スマートフォンなどから参照できるようにしている。さらに、古くなった製品を回収し、羽毛や獣毛を取り出し、洗浄して充填したりして、布団やマットレスを新品同様に再生している。昔ながらの布団の打ち直しの手法を布団以外の製品にも応用しているのだ。

 製品の販売においては、寝心地や快適さを最もアピールしており、サステナブルな要素は前面に押し出していない。しかしながら環境配慮事項は欠かせない要素として「当たり前」に表現されている。岩田氏の話では、この絶妙なバランス感覚は環境配慮型製品を普及しようとする場合に大事なことだそうだ。

 そのほか、店舗や製品のデザイン性もとても高く、ラークオール®というマットレスはグッドデザイン賞を受賞している。環境配慮型製品であっても、一定数の消費者に選択されなければ事業を継続していくことができないため、まずは「よい製品」として選ばれる必要があるとのことだった。

 今回の取材では、製品の説明を受けながら岩田氏のお話を伺い、改めて同社のサステナブル経営の質の高さと、製造から販売まで終始一貫しているその姿勢が強く印象に残った。


OEKO-TEX®認証ラベルとメンテナンス方法のQRコード

●小水力による再エネ電力を選択

 サステナブルなものづくりに取り組む同社が、再エネ100宣言 RE Actionに参加し、再エネ100%を目指す理由は、製造工程や販売店で使用する電力をすべて再エネにしなければ、製品がサステナブルではなくなると考えているからだ。実際に、同社は2022年から事業所(京都)、2か所の工場(滋賀)、直営店(京都、大阪、東京)で再エネ電力100%を実践している。

 再エネ電力の調達にはいくつか手法があるが、同社の場合は「地域内循環を考え、なるべく消費地に近い発電所であること」と「ソーラー発電よりサステナブルな小水力発電であること」の二点が選択のポイントになっているそうだ。事業所の電力については、再エネ発電所を選ぶことができる株式会社UPDATERの「顔の見える電力™」を通じて供給を受けている。一方、テナントとして入居している店舗の場合は電力の契約先を選択することができないため、京都府非化石証書共同購入プロジェクトを活用し、再エネ化している。


サステナブルな素材から作られている寝具。製造工程の電力も再エネ化されている。

●サステナブル経営推進の背景

 同社がサステナブル経営に取り組むことになったのは、2019年、一般社団法人サーキュラーエコノミー・ジャパン(現在は閉鎖)代表理事の故中石和良氏との交流がきっかけだそうだ。岩田氏は同氏に誘われサーキュラーエコノミーに関心のある企業の会合に参加して学ぶうちに、既存製品や遊休資産を活用することでなるべく新たな資源への依存度を低減するというEUのサーキュラーエコノミーパッケージ(https://ec.europa.eu/commission/presscorner/detail/en/IP_15_6203)の考え方に共感した。そして、そのようなサステナブルな未来が来ることを予想して、自らも同じように取り組むべく、同社の目標を定めた。とはいえ、中小規模の製造業者にとって従来の方法を全て急変させることは難しく、できるところから順次取り組みを進め、現在に至る。岩田氏曰く、「今後来るべき未来に備え、今から準備しているという感覚」だ。

 前述の会合では、株式会社UPDATER代表取締役の大石英司氏とも知り合い、そのことが再エネ電力を購入するきっかけになった。また、ここでの出会いが発端となり、株式会社イワタの製造工程で発生する端布を使った今治タオルが商品化されたそうで、岩田氏が「経営者にとって交流は価値がある」と強調するのも頷ける。


チンパンジーの寝床にヒントを得た「人類進化ベッド」。心地よい揺れや形状で熟睡できるそうだ。

●今後の夢

東京23区のデータ[1]によると、令和4年度の粗大ごみの個数は布団が1位(約98万個)、ベッドマットが12位(約15万個)、ベッドが18位(約12万個)となっている。布団に関しては打ち直しができる製品も多いため、岩田氏は、将来、粗大ごみの数量ランキングから布団をなくしたいと考えているそうだ。挑戦し甲斐がある大きな夢であり、サーキュラーエコノミーを実現する上でも重要なテーマである。今後も、岩田氏の取り組みを応援したい。

[1] 東京二十三区清掃一部事務組合. “清掃事業年報 令和4年度(東京23区)”. 東京23区のごみ処理. 2023. https://www.union.tokyo23-seisou.lg.jp/jigyo/renraku/kumiai/shiryo/jigyonenpo.html, (参照 2024-4-26).


代表取締役 岩田 有史(いわた ありちか)氏

受賞歴

2019年 京都市 輝く地域企業表彰「地域企業耀き賞」
2019年 京都市「これからの1000年を紡ぐ企業認定(第4回)」
2021年 京都商工会議所「第1回 知恵−1グランプリ」優秀賞
2022年 一般社団法人JAXURY委員会「Jaxury Award 2022」
2023年 一般社団法人JAXURY委員会「Jaxury Award 2023」、京都知恵産業の森「京都スマートプロダクト」認定
2024年 脱炭素チャレンジカップ実行委員会「脱炭素チャレンジカップ2024 再エネ100宣言 RE Action賞」、一般社団法人JAXURY委員会「Jaxury Award 2024」