再エネ100宣言 RE Action

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株式会社宮城衛生環境公社を訪問しました

脱炭素経営の新リーダー 宮城衛生環境公社 訪問記

2023.11.17
再エネ100宣言 RE Action 事務局 金子 貴代

●はじめに

 秋も深まる11月中旬に、宮城県仙台市にある株式会社宮城衛生環境公社を訪問した。「脱炭素チャレンジカップ2023 再エネ100宣言 RE Action賞」の副賞として、受賞した脱炭素に関する取り組みについて詳しく聞くためだ。

 同社は、仙台市の約半分のエリアの家庭ごみ収集運搬業務を担うほか、上下水道施設の清掃・修繕等を行う社員数175名の企業である。2019年の再エネ100宣言 RE Action発足直後に、宮城県内初の参加団体となり、2021年に21.9kWの太陽発電設備を設置、その後はBCP対策としてEVパワーステーションの設置とPHV車3台を保有するに至る(※1)。2023年4月に、新たに使用済み太陽光パネルのリサイクル事業を開始し、この施設は再エネ電力を使用しているということで、現地を見学させていただいた。


砂金 英輝代表取締役(右)と筆者。緑豊かな敷地内には風流な滝が流れている。


EVパワーステーション。ここからPHV車へ充電したり逆に電気を取り出したりできる。

●エコロジーセンター愛子

 施設の名前はエコロジーセンター愛子(あやし)。本社から車で15分ほどの距離に新しい太陽光発電設備と、リサイクル施設がある。パネル容量は77.76kW、蓄電池10kWhの自家消費型で、この施設の電力の60%を賄っている。残りの電力は、東北電力の水力発電のプランを契約し、10月から再エネ100%で運用している。


エコロジーセンター愛子併設の太陽光発電設備。6割の電力を賄う。

 中に入ると、広い空間に三台の大型機械が並んでいる。①アルミフレームと太陽電池モジュールを分離する機械、②ガラスを破砕して剝がす機械、③バックシートを破砕する機械だ。空間にはまだ余裕があり、処理件数が増えたときに増設するのだという。早速、工程を順番に見せてもらう。

工程1 アルミフレームの取り外し

 パネルを持ち上げるための補助アーム(力がなくても作業できる)でパネルを機械の中心に置く。機械が力をかけてフレームを外す。大きな音がする。


太陽光パネルの重さは約15~25kg


フレーム(黒い部分)を外す機械

工程2 ガラスの破砕

 直径1mmのステンレスの球がパネルのガラス面に打ち付けられガラスが剥がれていく。目視で確認しながら作業するため、歪んだパネルからも丁寧に除去できる。ガラスが取り除かれるとバックシートのみが残る。シートのままの状態で欲しいという事業者もあるそうだ。

 
手を入れて、目視しながらガラスを破砕して剝がす機械。薄いバックシートが残る。

工程3 バックシートの破砕

 バックシートを三つ折りにして破砕機へセット。ベルトコンベアーで上部へ運ばれ、細かく破砕される。重さで分別された粉砕物は次の処理業者へ引き取られる。パネルのリサイクル率は93%だそうだ。

 


薄いシートが細かく破砕される。この破砕片は専門事業者が処理して必要な物質を取り出す。

 工程全体の感想は、パネルの作りが思ったよりも単純なため分解・破砕が比較的簡単だということだ。2030年を過ぎると、大量のソーラーパネルが廃棄・更新時期を迎えることが予想されているが、このように破砕・分別処理ができる環境が整えば、使用済みパネルは適切にリサイクルされ、大規模な不法投棄や埋め立て処分は避けられると思う。

 工程2のガラスの破砕は、手作業でじわじわとガラスを除去していく作業だが、小学生も体験可能となっている。これはよい環境学習のコンテンツにもなりそうだ。見学も受け付けているということなので、多くの市民や事業者が漠然と不安に思っているであろうソーラーパネルのリサイクルについて、理解を促すよい場所になると感じた。

●砂金代表取締役の展望

 株式会社宮城衛生環境公社は、「明るい衛生環境づくり」をスローガンとして、成長戦略に「脱炭素経営」を位置づけている。その戦略どおり砂金氏はリーダーシップを発揮し、常に先を見据えて太陽光発電やPHV車、パネルのリサイクル事業を次々と実現してきた。しかし、SBT認定取得の際に自社のCO2排出を算出したところ、スコープ1(ガソリン等の燃料からの直接排出)が高い割合を占めた。砂金氏は自社車両からのCO2排出の課題を強く感じたという。そこで、次世代バイオディーゼル燃料「サステオ」の公道使用を東北で初めて開始した。20%を上限として通常の軽油に混ぜた燃料を一部車両で使用している。価格も通常の2倍を超えるそうだが、「まずは率先してやってみる」と前向きだ。再エネ100宣言 RE Actionに参加したことがきっかけとなり、2020年から新しいことへの挑戦を続けている姿勢に敬意を感じた。実際に新施設を見学させていただき、脱炭素経営の新しいリーダーとしてひときわ存在感を増しているということを強く感じた訪問であった。

参考情報(宮城衛生環境公社パンフレットより)

(2023年11月時点。必ず最新情報を確認してください。)
使用済みパネルの搬入受け入れ基準:サイズ 800~900mm×1,000~2,000mm以内
標準処理料金(搬入した場合)250円/kg(税別)

受賞歴

令和4年度 気候変動アクション環境大臣表彰
第23回グリーン購入大賞優秀賞
脱炭素チャレンジカップ2023 再エネ100宣言 RE Action賞

関連リンク

「再エネ100宣言 RE Action シンポジウム2022―再エネが照らす脱炭素社会」開催報告
事例3「トップリーダーを目指す脱炭素経営への道のり」
https://saiene.jp/symposium2022report

※1  再エネ100宣言 RE Action YouTubeチャンネルで砂金氏へのインタビュー動画を公開している。
https://youtu.be/n-0Q7MPkAZ4?si=gztUMtCmsksdT4Fg