記者説明会「停電しない会社」をどうつくるか? 再エネによるBCP最前線を公表 開催報告
一般社団法人再エネ100宣言 RE Action(アールイーアクション)協議会(以下、協議会)は、2026年9月11日、東京・大手町にて、記者説明会「『停電しない会社』をどうつくるか? 再エネによるBCP最前線を公表~令和8年熊本地震から1カ月半、先行事例から考える『エネルギー自立経営』~」を開催しました。
7月28日に発生した令和8年熊本地震では、同日17時時点で最大48,530戸が停電し、事業の休止を余儀なくされた事業者も少なくありません。こうした中、企業の事業継続計画(BCP)の策定率は、大企業の39.9%に対し、中小企業では18.3%にとどまります(帝国データバンク「事業継続計画(BCP)に対する企業の意識調査(2026年)」)。
本説明会において、協議会は、中小企業が外部環境の変化による経営への影響を抑えながら、自ら必要なエネルギーを確保し、事業の継続性を高める経営のあり方を「エネルギー自立経営」と位置付け、その重要性に言及しました。また、登壇した再エネ100宣言 RE Actionの参加企業の代表らは、これまでのBCP対策や、地震や台風の経験を通じて得た教訓について報告しました。
<開催概要>
■テーマ:
「停電しない会社」をどうつくるか? 再エネによるBCP最前線を公表
~令和8年熊本地震から1カ月半、先行事例から考える「エネルギー自立経営」~
■日時:2026年9月11日(金)11:00~12:00
■会場:TKPガーデンシティPREMIUM東京駅大手町
■登壇者:
・熊本県 商工労働部 産業振興局 エネルギー政策課長 霜出豊和氏(オンライン登壇)
・再エネ100宣言 RE Action参加企業
熊本利水工業株式会社 代表取締役社長 田中 祐治氏
山﨑株式会社 代表取締役 山﨑 正嗣氏(オンライン登壇)
・一般社団法人再エネ100宣言 RE Action協議会 理事 小山 貴史(エコワークス株式会社 代表取締役)
・一般社団法人再エネ100宣言 RE Action協議会 事務局長 金子 貴代

(写真:左から)小山 貴史 理事、山﨑 正嗣 氏(モニター)、田中 祐治 氏
目次
◆ 中小企業を取り巻く三つの外部環境の変化と「エネルギー自立経営」
◆ 熊本県からのコメント
◆ 建築事業者における脱炭素の取り組み
◆ 鼎談「中小企業のエネルギー自立経営と九州の最新状況」
◆ 中小企業を取り巻く三つの外部環境の変化と「エネルギー自立経営」
冒頭、協議会理事の小山貴史(エコワークス株式会社 代表取締役)が、再エネ100宣言 RE Actionの概要に触れ、再エネ100宣言 RE Actionは、電力需要家が使用電力を100%再生可能エネルギーに転換する意思と行動を示す枠組みで、2026年9月時点の参加は368団体、国際イニシアティブのRE100では対象外となっている中堅・中小規模の企業や、企業以外の多様な需要家が参加できる点が特徴だと説明しました。
続いて、中小企業を取り巻く外部環境の変化として、①エネルギー価格の変動・高騰リスク、②災害等による電力需給の不確実性、③サプライチェーン情報開示への対応の三点を挙げました。国際エネルギー機関の推計では、2026年下半期の日本の電力卸売価格が前年同期比で約4割高くなる見込みであること、2027年3月期からSSBJ基準に基づくサステナビリティ情報開示が段階的に義務化され、Scope3も開示対象となるため中小のサプライヤーにも影響が及ぶことなどを説明しました。
また、「熊本は、地震の発生確率では最も低いランクに位置付けられていたにもかかわらず、10年の間に震度7を2度も経験しています。もし、首都直下地震や南海トラフ巨大地震が起こったら、大企業だけでなく中小企業も含めて日本経済全体に極めて大きな影響が及びますが、こうした災害に対する備えが、十分に進んでいません」と述べました。そのうえで、これらの変化に備える経営のあり方として、太陽光発電や蓄電池、EV/PHEVと給電設備を組み合わせ、自らエネルギーを確保して事業の継続性を高める「エネルギー自立経営」を、全国の中小企業に呼びかけたいと強調しました。
◆ 熊本県からのコメント
続いて、熊本県 商工労働部 産業振興局 エネルギー政策課長の霜出豊和氏がオンラインで登壇しました。熊本県は2050年までに県内CO2排出量実質ゼロにすることを国に先駆けて宣言し、2019年12月に、都道府県で初めて再エネ100宣言 RE Actionのアンバサダー(活動の応援者としてPR等を行う)に就任しました。
霜出氏はまず、令和8年熊本地震の状況について説明し、県として特別相談窓口の設置や資金繰り支援を実施し、被災事業者の再建を後押しする自治体連携型補助金の準備を進めていることに触れました。
また、10年前の平成28年熊本地震では、屋根置きの太陽光発電設備や蓄電池、コージェネレーションといった分散型の再エネ設備等が、停電時に自律運転によって地域のエネルギー供給源となった事例もあったことに言及しました。一方で、今回の地震では、停電の間、事業を休止せざるを得ない事業者もあったと報告を受けており、平時から災害に備え、事業を継続するための体制を整えておくことの重要性を改めて認識したと話し、「再生可能エネルギーを脱炭素の手段としてだけではなく、災害時の電力確保の観点からも捉え直す機会となることを願っています」と述べました。
◆ 建築事業者における脱炭素の取り組み
小山理事は、自身が代表を務めるエコワークス株式会社(本社:福岡県福岡市)の取り組みを紹介しました。同社は2020年に全事業所・モデルハウスの使用電力の再エネ100%を達成。自家消費型太陽光発電を軸に、新電力の再エネ電力メニューへの切り替え、FIT非化石証書の購入を組み合わせており、後者二つも1kWhあたり1〜2円程度の差額で調達できているため、取り組み全体として十分な経済合理性があると説明しました。
「太陽光発電については、再エネ特措法第3条で、設置者の適正な利潤を勘案して電力の買取価格を定めると規定されています。毎年の調達価格等算定委員会で、産業用はおおむね20年間で4〜5%の利回りとなるように電力の買取価格が決められていることから、保証はありませんが、経済メリットは確実にあるということはお伝えしておきたいです。」
BCPの面では、福岡本社にV2Hを導入し、停電時は1階をEVからの給電、2階を太陽光発電の自立運転で賄う体制を整えています。また令和8年熊本地震では、震源地に近い宇城市小川町の顧客宅で、太陽光発電の自立運転とEVからの給電により、避難所へ行かずに自宅で生活を継続できた事例があったことを紹介しました。
◆ 鼎談「中小企業のエネルギー自立経営と九州の最新状況」
後半は、協議会事務局長の金子貴代の進行により、熊本利水工業株式会社 代表取締役社長の田中祐治氏、山﨑株式会社 代表取締役の山﨑正嗣氏(オンライン登壇)、小山理事による鼎談が行われました。
―熊本利水工業株式会社 代表取締役社長 田中祐治氏
プラント・管・電気・建築工事のほか、太陽光発電や小水力発電、温泉掘削まで手がける設備会社である熊本利水工業株式会社(本社:熊本県熊本市)は、南阿蘇村久木野地区でSPCを設立し、198kWの小水力発電所を稼働させています。
田中氏は今回の地震の被災状況を写真で報告し、震源地周辺でエコキュートの転倒が発生したことを挙げました。エコキュートは、本来であれば400Lの水を生活用水として使えますが、倒れてしまうと、その水が使えなくなります。
BCPについては、発災直後にSNSで社員本人と家族の安否を報告し、次に現場の状況を写真で送るという手順がおおむね機能した一方、被災地近辺の社員3名と連絡が取れず、安否確認が夜になったことを明かしました。
「訓練が必要だということを実感しました。また、当社はEVを保有しており、八代支店に移動させようとしましたが、道路が寸断されていて運ぶことができなかったのが事実です。八代支店は電気が3日ほど供給されず、水も止まりましたが、建物がしっかりしていたので災害拠点として使えました。そこに電気があれば、もっと充実した拠点になります。災害時の拠点となる、十分な機能を備えた事務所と、備蓄や簡易トイレの重要性に気づかされました。」
また田中氏は、八代市の水道普及率は5割程度で、残りは井戸水を使用していること、4,000世帯規模で断水が続いていること、同社が加盟する全国さく井協会として井戸の洗浄作業にあたっていることにも触れ、水道インフラ復旧の報道もあるが、実態はまだ厳しい状況だと述べました。
―山﨑株式会社 代表取締役 山﨑正嗣氏
1953年創業、九州内8拠点で食品容器や衛生関連用品を扱う包装資材専門商社である山﨑株式会社(本社:宮崎県宮崎市)が再エネに取り組む転機となったのは、2022年の台風14号でした。基幹業務システムのクラウド化を進めていたものの、唯一ローカルでの運用が残っていたEDI(電子データ交換)サーバーが広域停電により停止し、受注業務が止まりました。社用車のハイブリッド車2台を横付けして非常用電源とし、出荷・受発注ラインを維持したといいます。
この経験から同社は「非常時を乗り切る」から「停電しない拠点づくり」へと方針を転換。密閉型倉庫への建て替えのタイミングを捉え、太陽光発電・蓄電池・空調設備を一体で導入しています。自家消費比率は全社で15.5%、建て替えた営業拠点では大分29.9%、都城40.9%に達しており、自己託送と合わせてさらに引き上げる計画です。今後は九州の全8拠点に給電可能な車両(HV/PHEV/EV)を配備する方針を示しました。
「建物のリニューアルを含めて大きな投資ですが、その投資をすることができない企業は生き残っていけないと思います。災害が起こっても事業を継続できることは、必要なスペックです。電気代も中東情勢やデータセンターの需要増で上がっていく中で、一部でも自家発電に置き換えておけば影響を抑えられます。環境変化に強い企業になるという意味で、取り組んで良かったと思っています。」
一方で、山﨑氏は、今回の熊本地震の際に社員の自宅の停電・断水などの状況が詳細に把握できなかったことを反省点として挙げ、「安否確認システムは導入していますが、どのような情報を収集するのかを明らかにし、日頃から訓練しておくことが必要だと感じました。今後の防災備蓄についても、地震のときに『これが欲しかった』というものを社員にヒアリングして対応を進めていきます」と述べました。
―まとめ
最後に、小山理事は「再エネをBCPの中核として位置付ける必要があり、そのような認識が全国の中小企業にもっと広がることが重要です。企業が活動を継続できなければ、その先にいる取引先やお客様にも大きな影響が及びます」と述べました。
また、10年前の熊本地震で社員が自宅で被災し出勤できなかった経験から、同社では社員の自宅の備えを促す呼び水として防災グッズ購入費1万円を支給していることを紹介し、「社員の自宅も含めた災害への備えは、経済活動を維持するうえでも非常に重要です」と呼びかけ、鼎談ならびに記者説明会を締めくくりました。
(参考)
●tokyochips 2026.9.12
『再エネ100宣言 RE Action協議会 エネルギー自立経営トレンドを公表
停電しない会社をどうつくる? 再エネが中小企業のBCPを変える』
https://topics.smt.docomo.ne.jp/amp/article/tokyochips/trend/tokyochips-62585
●GZNews 2026.9.14
再エネ100宣言 RE Action協議会 エネルギー自立経営トレンド
停電しない会社をつくるカギを公表 再エネが中小企業のBCPを変える可能性
https://gzn.tokyo/41623
●共同通信社 2026.9.16
「電気ないと仕事できない」災害時の事業継続性を議論 企業は再エネ自立経営を
https://www.kyodo.co.jp/news/2026-09-16_4035622/
